
Journal / Story
思想と制作の記録
Journal / Story は、作品が生まれる背景や、制作に対する考え方を記録するための場所です。 ここに書かれている内容は、作品の説明であり、同時に野尻雄介という作家の思考の軌跡でもあります。
Behind the Work
01
制作の裏側
この作品は、シャッターを切る前からすでに制作が始まっています。
構図や光を決める以前に、「なぜこの一枚を残すのか」という問いから制作は始まります。 何を写すかではなく、何を写さないかを決める時間の方が長いことも少なくありません。
撮影は一瞬ですが、その一瞬に至るまでに、場所の選定、光の読み、被写体との距離、 そして完成形のイメージを何度も反芻します。
さらに制作は撮影後も続きます。階調の整え方、色の深さ、紙の質感。どこで止めるかという判断が、作品の強度を決めます。
制作とは、偶然の産物ではありません。思考と選択の積み重ねです。
その工程すべてが、一枚の作品の中に静かに封じ込められています。
Thoughts on Art
02
作品論
写真は、撮られた瞬間よりも、 時間が経ってから意味を持つものだと私は考えています。
多くの写真は、撮影された直後に消費され、次の瞬間には別の画像に置き換わっていきます。 しかし作品としての写真は、すぐに理解されることを目的としていません。
むしろ、時間の中でゆっくりと意味が立ち上がることを前提にしています。
私は、たくさん撮ることよりも、残す一枚を選ぶことを重視しています。数を増やすことは簡単ですが、減らす判断の方が難しいからです。
写真はデータではなく、物質として存在し、空間の中で呼吸するものだと考えています。 飾られたとき、光や壁の色、見る人の記憶と重なりながら、その作品は初めて完成します。 作品とは、撮影の瞬間ではなく、時間とともに育つ存在です。
World Photographic Cup
03
WPC参加記録
写真は、撮影技術だけでは語れない世界との対話である――
この思いのもと、私は World Photographic Cup(WPC) に挑戦してきました。
WPCは、各国が代表フォトグラファーを選び、国別対抗で競う国際的な写真の祭典です。 日本代表として何度もエントリーし、世界中の審査員と作品を比較し評価される場は、撮影現場以上の学びと緊張がありました。
作品選定では、熊本・八代で出会った風景や人々の息遣い、その本質をどう切り取るかを重視しました。単に美しいだけでなく、内包する情景や関係性が問われる場でもありました。
世界の舞台で評価される写真と、地域に根ざした作品との違いは何か――
それは技術ではなく、問いかける力だと感じています。
写真は見る人自身の時間の中で意味を育てるものだからです。
代表として感じたことは、作品は個人の表現であると同時に、場所の物語を世界に伝える役割もあるということです。
熊本・八代という土地から世界へ、静かな声を届ける挑戦は、これからも続いていきます。


この考え方は Fine Art Prints や Portrait as Art の制作にも反映されています。
▶ Fine Art Prints
▶ Portrait as Art
